【書評】Learn Better(アーリック・ボーザー著)
効率の良い勉強方法
うつで休職中に、やることが無いので図書館でふだん読まない経済学のジャンルの本を借りて読んでいました。以前からもう少し経済を理解したいと思っていたからです。しかし、経済学と相性が悪いのか、分からないものを分からないまま読むのは苦痛でした。
特にうつの状態だと、『うつヌケ』という本の著者が経験したと書いていましたが、脳みそを「濁った寒天」が覆っているようなモヤモヤした感覚が私にもあり、長文を読んでも頭に入ってこなくてしんどい。この時期にあえて脳に苦痛を与える必要はないのかも知れませんが。
そこで、何か脳に楽な勉強方法がないか、と期待して本書を手に取りました。
結論としては、「学習にコンフォートゾーンはない」とのことで、脳に楽な勉強方法はなさそうだということが分かりました(当たり前か。。)。むしろ脳に定着させるために効率の良い勉強の仕方が本書には書かれていたので、忘れないように記録しておこうと思います。
著者の紹介
著者のアーリック・ボーザーさんは、アメリカの先端政策研究所(Center for American Progress)のシニアフェロー。学者ではなさそう。本人の公式サイトを見ても奥付の情報とそう変わらない内容しか書かれてません。本書を書いたことで有名になった方ということでしょう。
TEDで本書と同じ「How To Learn Better」というテーマで講演している動画がありました。
学習する力は現代でもっとも重要な能力のひとつ
Googleで検索すればすぐに情報が得られる現代で、事実情報の持つ価値は激減しています。専門知識の寿命もかつてなく短くなっています。新しく知識を習得する力が、現代においてもっとも重要な能力のひとつで、あらゆるスキルの前提となると言えます。
本書では、様々な「学習学」の成果の集大成として、専門知識を身に着けるための体系的なアプローチを以下の6つの手順で表しています。
- Value(価値を見出す)
学ぶ気が無ければ学べない。学習とはすなわち対象の意味を知ること。 - Target(目標を設定する)
何を学びたいのかを厳密に見極めて、目的と目標を設定しなければならない。 - Develop(能力を伸ばす)
学習のこの段階では、スキルを磨き、パフォーマンスを向上させることに特化した手段を講じる必要がある。モニタリング(記録・録音・録画して振り返る)や外部からのフィードバックが効果的だ。 - Extend(発展させる)
この段階では、基本から踏み出して知識を応用する。スキルと知識に肉付けして、より意味のある形の理解を形成したい。人に教えるのもよい。 - Relate(関係づける)
専門知識を習得するには関係を見出すこと。効果的な学習とは要するに知識の相対の中の相互関係をつかむことだ。 - Rethink(再考する)
学習には間違いや過信がつきものだから、自分の知識を見直し、自分の理解を振り返って、自分の学習したことから学ぶ必要がある。
いずれの手順にも共通しますが、積極的に関与するほど学びも深まるといえます。著者は、例えば、新しいテキストを読んでいるときは要約しながら、自分に問いかけをしながら、読むことを推奨しています。
また、人は一度学習したことも忘れてしまうものです。あらかじめ忘れることに対して手を打っておきましょう。すなわち計画的定期的に間隔を置いて復習するよう学習スケジュールを組みましょう。
そしてもっとも大切なことは感情です。できると思わなければできるようになりません。
さてどのように実践するか
不肖私も、これまで大学受験や資格試験や新しい仕事に関することでそこそこ勉強してきましたが、その方法と本書の提唱する上記の「体系的アプローチ」は大きく異なっておらず、そう見当違いなことはやっていなかったなと確認できた気がします。
特に要約しながらテキストを読むことが知識定着に効果的というのは、私の経験的にも納得できるものでした。あと、誰かに教えるというのも知識定着に効果があると思います。
うつの今それらをやるのは精神的にも肉体的にも苦痛ですけど、少しずつ長文が読めるようにリハビリとしての読書を続けたいと思います。できると思わなければできるようになりませんので。
いずれ本書のやり方を意識的に実践して英会話とか資格試験の勉強でもしようかしら。