雨のブログ

人生の雨季に本を読む

「ここで違う意見を出すとまずいですか?」

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最大2億円の赤字が見込まれるシステム開発のプロジェクトの稟議が通りそうです。ハッピーケースでも数億円の利益しか見込めないのに。十分に議論された形跡もなく、こんな提案がとおるなんてないと思っていたけど、なぜなんでしょう。
推進している役員はベンダーに丸投げすればシステムは完成すると思っているようです。他の役員にはすでに根回し済みのようです。他の役員はシステム開発についてそれほど知見を有しない人が多く、彼のいいなりです。

会議でよくあるのが、反対しているのが自分だけと思い込み、反発を恐れて意見が言えないというものです。会議の流れが読めないうちに明確に意思表示をすると、足元をすくわれかねません。反対意見を持っていても、援軍の存在が確かでないと、口にするのがためらわれるというのも理解できなくはありません。
会議が終わった後に雑談していると、「え、あなたも反対だったの?それならそう言ってよ~。私も反対だったのに…」という話がよくあります。誰かが勇気をもって口火を切らなければ、そんな現状は打開できません。

こういうときにあからさまに反対を言うと、相手から感情的な反発を招きかねません。相手の意見に、自分の意見をぶつけるのではなく、「こういう選択肢もありますが、どうでしょうか」という体で、

ここで違う意見を出すとまずいですか?
ちょっと最後まで聞いてもらえますか?

と、先に断りを入れておくと反対意見も言いやすくなります。
相手としても、どんな意見が出てくるかわからないけど、無下に嫌だとは言えないと思います。それに最後まで聞くことに合意した以上、意見を遮らずに聞いてもらえるはずです。ここでは『影響力の武器』に書かれていた「コミットメントと一貫性」を使います。
「コミットメントと一貫性」とは、いったん決めたことは最後まで貫き通そうとする人間の性質のことをいいます。
epascal.hatenablog.com

途中で自分への反対意見だと分かっても、最後まで聞くことにコミットメントした以上、最後まで聞かざるを得ません。自分の考えと相いれない意見でも会議に出た以上、他の方からの意見を求める必要が出てきますので、他の方も意見を言いやすくなります。

会議の冒頭で会議のゴールを共有しておくと、なお意見を言いやすくなります。つまり自分が反対意見を表明するのは、会議のゴールに向かうのに必要だからであって、あなたに敵対するためではないというスタンスを理解してもらうのです。
相手の発言を認め、自分の意見も表明し、会議のゴールに向かってよりより意見にブラッシュアップしていく。
そうして会議のメンバーがどんどん意見を言いやすくなる雰囲気をつくっていくことが、チームの心理的安全性を高めることに繋がります。

弊社の場合、もっとも心理的安全性を高めるべきは経営チームなのではないかと思います。反対意見も受け入れて実質的な議論を行い、リスクが大きすぎるプロジェクトの稟議を早々にリジェクトして欲しいです。
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