雨のブログ

人生の雨季に本を読む

「とは言え、ゼロベースで検討しませんか?」

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M&Aのプロジェクトでは、実行するかしないかを決めるための事前調査として、デュー・デリジェンスが行われます。
財務面、法務面、ビジネス面でそれぞれ関係者にヒアリングを行ったり、資料をかき集めてもらって提出を求めたりします。デュー・デリジェンスを行う際には経営企画部からアドバイザーや会計士や弁護士などの専門家に依頼するなどして、数百万円から数千万円近くかかることもありました。

しかし、デュー・デリジェンスの結果、期待したほどビジネス上のシナジー効果が見込めなかったり、財務面で過大な不良在庫を抱えてたりと、このままGoを言いづらい局面が生じることがままありました。
反面、すでに関係当事者の間ではNDA(秘密保持契約書)を取り交わし、M&Aが成立することを前提にビジネス面での共同プロジェクトが進んでいて、なんだか後戻りしづらい感じ。これまでに費やした人手やデュー・デリジェンスの費用などの過去のコストや手間が頭をよぎります。ましてやこれが社長が持ってきた話だったりすると、社長の顔までも潰しかねません。相手の社長が、とてもいい人だったりします。

しかし、私は言いたい。

とは言え、ゼロベースで検討しませんか?

M&Aの契約書には、契約解除の条件や損害賠償の定めなども書き込まれますが、買収実行後は既に身内に取り込まれているので、買収側にとっては絵に描いた餅。契約前に巻き戻せるはずもなく、あまり実効的ではありません。
M&Aによるシナジー効果が曖昧なままでは、仮に実行されたとしても当時の担当者も交代してしまえばM&Aの意義が薄れ、結局、協業は上手く行かなくなります。

M&Aで事業を成長させていこうとするときには、なんと言っても契約締結直前の冷静な判断が大事です。

それまでに費やした時間や手間やお金を惜しんで、意思決定に影響を与えることを、サンクコスト効果(埋没費用効果)と呼びます。
シナジー効果がどうしても見込めないなどの理由で撤退すべきと判断したときは、サンクコスト効果を回避して、躊躇なく決断すべきです。

くれぐれも経営企画部の方は、社長案件だからと言って、成約させることだけに躍起にならないでください。あとで現場が困りますので!

Photo by Siarhei Palishchuk on Unsplash