【書評】人に頼む技術(ハイディ・グラント著)
頼みごとが超絶苦手な私
人にお願いすることが超絶苦手な私。この『人に頼む技術』を読んで、意外と人は人を助けたがっている、助けることで自分の善性を感じたがっているという学びがありました。以前、『エッセンシャル思考』を読んで、人生の操縦桿を取りもどすのに、「より少なく、しかしより良く」のエッセンシャル思考を実践することが大事だと学びました。
エッセンシャル思考によって本当にやるべきことを絞り込んだとして、他方の優先順位を下げた仕事は自分以外の誰かがやることになります。自分の手元に初めから来ていなければ、断るだけで済みます(それだって心理的な負担は大きいです)が、いま自分のところにあれば、その(重要でないと判断した)仕事を誰かに振る必要があります。私はこの「仕事を誰かに振る」ということが超絶苦手です。重要でないと判断した仕事を無くせるのが一番良いことなのでしょうが、そうも言っていられない場合ってあります。例えば、社用パソコンのアップデートとか、チームメンバーの在宅勤務の希望日の調整とか。
頼みごとを相手に正しく伝える方法
現代社会では自分だけでできることは限られています。仕事を進めるには人の助けが必要になります。人の力を借りることなく成功することは不可能といっても過言ではありません。でも、人の助けを借りることは人生で避けたいことの上位にくるほど、人に不安や恐れを抱かせる行為です。そのため、上手に人に頼む術を身につける必要があります。本書では頼みごとを相手に正しく伝えるために3つの方法を提示しています。- 自分にとって重要な集団の中に困っている人がいるという「仲間意識」を活用すること
- 誰かを助けることで助ける側がポジティブな感覚(「自尊心」)を得るようにすること
- 助ける側が「有効性」を把握できるようにすること
こんな頼み方はいけない
逆にこんな頼み方をしてはいけないという点については7つ挙げています。
- 共感に頼りすぎる
- やたらと謝る
→これやってしまいがちです。 - 言い訳をする
→これもよくやってる。 - 頼みごとの内容の楽しさを強調する
→これは意外です。何かを頼む時、その頼みを引き受けることのメリットを相手に強調してはいけないとのこと。なぜなら頼む側が殊更アピールしてしまうと、頼まれた側はコントロールされている感覚を抱きやすくなり興ざめしてしまうからだそうです。 - その頼みごとは些細なものだとアピールする
→これも意外。頼みごとを小さく見せかけることで、得られる助けも小さく助ける側が感じる温かい気持ちも小さくなってしまうからとのこと。 - 借りがあることを思い出させる
→これは分かります。純粋に助けてあげてプラスの気分を味わっているところに、過去に借りがあったことを思い出させると善意が単なる弁済になってしまうのは興ざめします。 - 助けられたことの自分にとってのメリットを強調する
→これも意外。誰かを助けるのは自分が良い人間でありたいと思うからでもあり、自分の価値観に従った行動をとり、周りから尊敬されたいと考えているので「あなたは本当に責任感が強いのね」「君は本当にそのことが上手だ」のように感謝の表現を助けてくれた相手の性格や能力を褒め評価する方向にしたほうがよいとのこと。なるほどなるほど。
著者はベストセラー作家の社会心理学者
著者のハイディ・グラントさんは、1973年生まれでコロンビア大学ビジネススクール・モチベーションサイエンスセンターの副所長を務めている社会心理学者。2017年と2019年の両方で、彼女は年2回のランキングで、Thinkers50の世界で最も影響力のある経営思想家の1人に選ばれました。『やってのける』や『だれもわかってくれない』『やり抜く人の9つの習慣』といった著書が邦訳されて日本でもベストセラーになっているます(この3冊では著者名をハイディ・グラント・ハルバーソンとしています)。
著者のグラントさんは、TEDで「How to ask for help and get a yes?」というテーマでプレゼンされています。本書の内容をかいつまんで約12分で説明してくれています。
人は誰かの助けになりたいと思っている
本書では人に頼み事をする際に知っておくべきこととして、
自分を振り返ってみても、抱えきれなくなってパンクしてしまうほど「できるだけ人の助けになりたい」とか「人から頼まれたことは断りたくない」とか思って仕事をしてきたところがあります。ですので、他の人もそう考えている割合が多いということは、頼む側に回ったときに勇気づけられます。
また、上記の動画でもグラントさんが強調しているように、人に助けを求めるときは「はっきり明確に」だそうです。余計なお世話と思われたくないがため、手助けを躊躇ったという経験は、誰にもあると思います。助けてもらいたい人にあと一歩踏み出してもらうためには、やはり自分が助けが必要な状態であることを(しかもまさにその人に助けてもらいたいということも)はっきりと示す必要があるということです。
やたらと謝りながらお願いしてしまう私からすれば目から鱗が落ちる思いでした。これからは頼みごとをすることが助けたいと思っている人への人助けだと思って、勇気をもってお願いしてみようと思います。
- 思っている以上に人は誰かの助けになりたい(それによって善い人物であることを示したい)と思っているということと、
- 思っている以上に自分が助けを求めていることが周りの人に伝わっていないということ、
自分を振り返ってみても、抱えきれなくなってパンクしてしまうほど「できるだけ人の助けになりたい」とか「人から頼まれたことは断りたくない」とか思って仕事をしてきたところがあります。ですので、他の人もそう考えている割合が多いということは、頼む側に回ったときに勇気づけられます。
また、上記の動画でもグラントさんが強調しているように、人に助けを求めるときは「はっきり明確に」だそうです。余計なお世話と思われたくないがため、手助けを躊躇ったという経験は、誰にもあると思います。助けてもらいたい人にあと一歩踏み出してもらうためには、やはり自分が助けが必要な状態であることを(しかもまさにその人に助けてもらいたいということも)はっきりと示す必要があるということです。
やたらと謝りながらお願いしてしまう私からすれば目から鱗が落ちる思いでした。これからは頼みごとをすることが助けたいと思っている人への人助けだと思って、勇気をもってお願いしてみようと思います。
本書を読んで、自分の中にあった頼みごとは相手にとって迷惑なだけだという価値観の転換が起こり、とても有意義でした。復職できそうになった頃に再読しようと思います。