雨のブログ

人生の雨季に本を読む

好きな英治出版の本10選

f:id:epascal:20211104131013p:plain
はてなブログ10周年おめでとうございます。
10周年特別お題「好きな◯◯10選」ということで、いろいろ考えましたが、最近、私の本棚に気づいたら増えていた英治出版の本を10冊ピックアップしようと思います。

英治出版(エイジシュッパン)とは

1999年に設立された出版社で、社長が原田英治さん。社名は社長のお名前から来ているのでしょう(勝手な想像)。実は最近まで社名を英知出版(エイチシュッパン)と誤読していました。人間の英知が詰まった本を多く出版しているので勘違いしてしまったようです。
出版業界での経験を持たずに入社した人がほとんどだということですが、組織開発やリーダーシップの翻訳書を始め話題作を続々と世に送り出している、出版界でいま私が勝手に注目している会社です。
気づいたら本棚に英治出版の本が増えていました。なかでも私が好きなのは次の10冊です。

1冊目:チームが機能するとはどういうことか

心理的安全性に関心があって本書を手に取りました。 即興的なメンバーでも定常的なメンバーでも、チームで成果を出す方法について書かれています。スキルも立場も異なるメンバーで成果を出すには、学習するための骨組みを作る、失敗から学ぶ、職業的・文化的な境界を超える、心理的安全性を高めることが重要とのこと。 ではどうやって職場に心理的安全性を確保するか。 それにはリーダーの役割が大事で、親しみやすい人になる、失敗は学習する機会であることを強調する、などの振舞い方を解説していて、分かりやすく、かつ行動の指針となる内容でした。

2冊目:恐れのない組織

『チームが機能するとはどういうことか』と同じエドモンドソン教授の著作。前著の心理的安全性の部分だけスピンオフした感があります。前著も大変良かったですが、本書もそれにおとらず良かったです。特に第8章の「心理的安全性に関する、よくある質問」の項は面白い。「独裁的なトップの下で好業績を上げている企業についてどう思うか」「同僚が職場で本音を言うのでイライラする」「上司が変われず変わる気もない場合、その部下はどうしたらよいか」など、心理的安全性に対する反応としてありそうな質問に著者が答えていて、理解が深まりました。つくづく心理的安全な職場で働きたいです。

3冊目:なぜ人と組織は変われないのか

ほんと、なぜ人と組織は変われないのでしょうか。変革が求められる場合には、技術的な課題と適応を要する課題とがあり、知性の発達が必要な適応を要する課題に、技術的に対応してもダメだそうです。適応を要する課題に対しては、変革を阻む免疫機能の存在を知ることが重要。免疫機能は、変革目標に対して阻害行動となって表れますが、阻害行動の裏には隠れた意図や意図せざる深層心理があり、さらにその奥には強固な固定観念がある。阻害行動を減らすには、隠れた意図や強固な固定観念見える化して、働きかけることが必要ということでした。

4冊目:謙虚なリーダーシップ

「謙虚なリーダーシップ」とは、個人的な関係の上に築かれる、他者とのつながりに基づくプロセスと本書では定義されています。一人の英雄が持つビジョンや目的に基づくリーダーシップと対置しています。 複雑さが増した不確実な時代にはリーダーがすべての情報を処理でき、適切に判断しうるということは期待できません。 むしろ試行錯誤を認めチームメンバーそれぞれの強み弱みを受け入れ、本音を伝え合う関係の上に築いたチームでなければ、ますます成果を上げることは難しくなるでしょう。本書を読んで、リーダーは謙虚にならざるを得なくなると思いました。

5冊目:サーバントリーダーシップ

『謙虚なリーダーシップ』に続いて、カリスマ的でないリーダーシップスタイルが有りうるのか、有るとすればどういうものかを知りたくて本書を読みました。しかし、明快な答えは書いておらず寓話やたとえ話や断片的な事例を通じてサーバントなリーダーとはどういうものかが書かれているだけでした。もっと分かりやすく書いてほしかったです。本書の初版が1977年と古く、メンバーに仕えるリーダーというスタイルの提唱が、リーダーシップのあり方に幅を持たせ、その後の個性を活かしたリーダーシップという考え方に繋がってくるのだと思いました。

6冊目:学習する組織

「自己マスタリーのディシプリン」などの翻訳が気になりますが、重要なことが書かれています。この世界を不可分の全体としてとらえ自分も問題の一部なのだという考え方や、今日では重要な決定はほとんどすべてチームで下されるのでチームこそが組織における主要な学習単位になりつつあるとか、チームが学習するにはダイアログとディスカッションという二つの異なる方法を習得する必要があるといった指摘は、なるほど得心できます。私の理解力(と訳のまずさもあると思いたい)では読み通すのが難しい本でした。

7冊目:U理論

人と組織にイノベーションを起こす「U理論」とのふれこみですが難解でした。直面する問題が、自分も問題の一部であり打ち手が必ずしも解決の前進にならないタイプであれば、それに対処するにはU理論のメソッドが有効とのこと。過去の経験からくる執着を手放し、恐れを乗り越え、出現する未来を受け入れる。そして即興的に行動に移すべきとのことです。U理論は意識変容から行動変容に繋げる内省の方法論と理解しました。違うかな。

8冊目:なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか

組織に属するほとんどの人が、本来の仕事とは別に、自分の失敗や弱さを隠すという「もう一つの仕事」をしています。これをやらなくなれば、組織として生産性が向上するはずです。しかし、組織の中で弱さを見せあうことは難しい。人に弱みを見せるべきではないという強い固定観念に基づいているためです。リーダーこそ率先する必要がありますが、上の世代になるほどガチガチに凝り固まっていて、容易にこの固定観念は変えられないと思います。お互いに弱さを「見せあう」ことが心理的安全につながるのに。

9冊目:カスタマーサクセス

従来のビジネスはいかに新規の顧客を多く獲得し、受注・売上を計上するかがゴールでした。しかしサブスクリプション型のサービスのように継続して使い続けてもらわなければ企業は収益を確保できない状況が広がると、カスタマーサクセスが重要になってきます。本書ではカスタマーサクセスの10原則を学ぶことができます。マーケティングやセールスの分野と比べてカスタマーサクセスの専門書はまだ少ないですが、英治出版では他に『カスタマーサクセス・プロフェッショナル――顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて』や『カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」』など、なぜかカスタマーサクセスに力を入れているようです。

10冊目:Learn Better

専門知識の鮮度がどんどん落ちていく現代では、新しく知識を習得する力があらゆるスキルの前提となると訴える本書では、専門知識を身に着けるための体系的なアプローチを解説しています。ただ至ってオーソドックスなものでした。 例えば、人は一度学習したことも忘れてしまうものなので、忘れることを織り込んで、計画的定期的に間隔を置いて復習する学習スケジュールを組む。しかし、大学受験や資格試験などの受験勉強では当たり前に言われていることです。 本書はこれまでの勉強法の確認用と位置づけるのが良いと思いました。

まとめ

私のいまの関心事である組織開発やリーダーシップをテーマにしたタイトルばかり購入しているようです。どれもしっかりした学術的背景を持ちつつ実務や実生活での応用にも配慮された名著で、出会ってよかったと思える本ばかりです。
今回初めて英治出版のホームページを拝見しましたが、書店で表紙だけ見て難しそうだとスルーしていたあの本も英治出版だったのかと気付かされることが多かったです。これからも英治出版の本に注目していきたいと思います。
eijipress.ocnk.net
はてなブログ10周年特別お題「10にまつわる4つのお題