雨のブログ

人生の雨季に本を読む

「マーケティングの部門って要りますか?」

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私の会社にマーケティング部門をつくる動きがあります。過去なんども立ち上げの話が出ては消えた類のものらしいです。

マーケティングの部門をつくると、その部門だけがマーケティングの責任を負うという認識になりがちです。そうであれば部門の立ち上げには反対です。

マーケティングは会社の全ての部門がおこなうものと考えるからです。

何かコミュニケーションの手段があるなら、いつでもどこでもマーケティングはできますし、すべきです。

  • 電話に出るとき
  • メールを送るとき
  • 弊社の製品が使われるとき
  • 弊社のサービスが使われるとき
  • 請求書を送るとき
  • レジのカウンターに置いたチラシが手に取られたとき
  • コーポレートサイトを閲覧されるとき

こうした日々の小さなことこそが、ノベルティ付きのユーザーアンケートよりも大切です。マーケティングは独立した出来事ではなく、日々やっていることのすべての集まりなのです。

 

マーケティング専門の部門をつくったときに、そうしたことを忘れられてしまうのを恐れます。

叶うならば、社内のどんな部門にもアンテナを張り巡らせ、日々生じる市場の動向や顧客の変化を感じとれる状態にしていきたい。そのために全ての部門でマーケティングを意識できる仕組づくりを考えたいです。弊社の場合、まずは、情報の共有化・民主化からでしょうか。

 

情報の民主化といったときに、参考になるのが『ワークマン式「しない経営」』で書かれていた「エクセル経営」です。

epascal.hatenablog.com

ワークマンの土屋専務が行ったように、エクセル講習会を社員全員を対象に実施し、社員みんながエクセルを使えるようにするのが良いのではないかと思います。

エクセルが使えることでデータを読み取る力も育てることができます。データに基づいて議論ができるようになれば、役職の有無や社歴の長短に関わらず、フラットに議論することができ、そのフラットな関係が、市場の変化を感じ取る現場の力につながります。

「エクセル経営」を目指し、1~2年かけてデータ活用を浸透させていくことで、社員の情報感度を上げる。

そのあとにBI(Business Intelligence)を導入したり、マーケティングの部門を立ち上げ情報を集約したりするほうが、顧客や市場の声を非定型的に拾い上げられ、会社の継続的な成長に寄与できると思うのです。

弊社も「エクセル経営」を目指しましょう、役員!まずはあなたがエクセルを使えるようになることからです!!

Photo by Lukas from Pexels

「この会議自体、必要ですか?」

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就業時間のちょうど真ん中あたり。午後1時から2時は魔の時間です。昼食後で腹が満たされた同じ職場の人から「仕事のことでちょっといい?」などと話しかけられます。同僚とのその場で始まるちょっとした話し合いなら害が無いと思うかもしれません。しかし、作業の中断は、ただの中断にとどまらないのです。作業への復帰までの時間を含めると実際にはかなり生産性を蝕んでいます。そしてその日の残業につながります。

 

それ以上に最悪な邪魔者は「会議」です。理由は以下の通り。

  • 通常1分あたりごく少量の情報しか伝達しない。
  • 会議の主題は容易に脇道にそれる。
  • 会議には緻密な準備が必要だが、たいていはその時間がない。
  • 誰にも目的がはっきりとわからないくらい曖昧な議題が用意されることが多い。
  • 会議時間を休憩時間と勘違いして、無駄話で時間を無駄にする人が混じる。
  • 会議は会議を生み出す。

 

加えて、会議がテレビ番組のようにスケジュールされるのも良くないことです。会議を30分か1時間の枠でスケジューラーに入れるのは、スケジューラーがそのように動くからです。しかし、会議の目的を達成するのに7分しか必要なければ、そのために使う時間は7分です。7分を30分に引き延ばしてはいけません。

 

それに会議の実際のコストは莫大です。1時間かかる会議を設定し、参加者を10人集めたとしましょう。これは実際には1時間の会議ではなく10時間の会議です。1時間の会議でのアウトプットと10時間分の生産力を交換しているのです。そしてそれは自分がおこなっていることを止め、会議に参加するため会議室に移動し、会議から戻ったら会議の前におこなっていたことを再開しようと頭を切り替える精神的な負担を考えると、おそらく12〜3時間分くらいにはなるでしょう。

果たして1時間の会議のために十数時間分の生産力を犠牲にしていいのでしょうか?時々はいいかもしれない。しかしこれはひどく高くつくことを知っておきましょう。それだけの価値がこの会議にあるか

この会議自体、必要ですか?

と自問してみましょう。

 

もし絶対に集まらなければいけないと決めたのであれば、次のような単純なルールを守ることで会議が生産的になるようにしましょう。

  • アジェンダを事前にメンバーに配布する
  • タイマーをセットする。タイマーがなったら会議は終了
  • 可能な限り少ない人数しか呼ばない
  • 常に明確な会議のゴールを設定する
    会議のゴールには「決める」「生み出す」「伝える」「築く」しかない
  • チェックインでゴールを共有する
  • 解決策(その解決策は一時的なものでも構わない)を出して終了し、誰かにそれを実行する責任を負わせる

 

なによりお勧めしたいのが、会議室の代わりに問題が起こっている場所で会うことです。実際のものを見たり、聞いたり、指差したりしながら議論することで、本質的な解決策が生まれやすくなるからです。

職場を変えるにはまず会議から、といきたいです。

 

 

「最後まで話を聞いてみませんか?」

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誰かと1対1で話をしているときに、途中で話をかぶせられて黙ってしまったら、負けた気がします。かぶせたほうは発言を奪った意識がなく、私がしぶしぶ譲らざるを得なかったことも知りません。
会社内で地位や役職が高い人は、ふつうの状態が威圧的に働いていることになかなか気づきません。自分はフランクに接しているつもりでも、相手を恐れさせて、抑圧していることが分からないのです。

地位や役職が高い人は、低い人から指摘されない限り、自らの話をかぶせたことに気づくのはまれです。割り込みの被害にあった当人はなかなか言い出せないのが、我ながら情けないです。
そんな人たちに対抗する一つの手段が、『影響力の武器』にあった「コミットメントと一貫性」を使う方法です。
epascal.hatenablog.com
「コミットメントと一貫性」とは、いったん決めたことは最後まで貫き通そうとする人間の性質のことをいいます。
自分が発言するときに、あらかじめ

ちょっと長くなりますが、最後まで聞いてもらえますか?

と事前に予防線を張っておくことのです。意見を述べるときに、最後まで聞くことを約束してもらってから始めます。「コミットメントと一貫性」により、いったん約束したら、最後まで我慢をして聞いてくれる可能性が高まります。功を奏さず、途中で割込みがあっても、「あと少し我慢してもらえませんか?」と言えば、気づいてくれるに違いありません。

さらに、割り込みの被害者同士で助け合うことも重要です。
誰かが発言を抑圧されていれば、こう言って周りのみんなで守ってあげましょう。

最後まで話を聞いてみませんか?

割り込みの被害にあいそうな人がいたら、援護射撃をするのです。

そんなことを繰り返しているうちに、「話は最後まで聞く」というルールが職場の風土となり、意見を妨げられないという心理的安全性につながります。最終的にはここまで行きたいです。

会議というと、どうしても意見を「言い合う」場だと思ってしまいます。そうなると、いきおい主張するほうに意識が集中してしまい、相手の言い分をよく聞いて、正しく理解するのがおろそかになります。
そうすると、少なからず誤解や抽象的な空中戦が起こってしまいます。かみ合わない議論が繰り返される悪循環に陥るわけです。

ここで発想を変えてみましょう。会議とは意見を「傾聴する」場と考えるのです。
お互い虚心坦懐に話を聞くことを心がければ、相手への理解も進み、無用な空中戦をしなくて済みます。じっくり聞けば、相手の存在を認めるサインとなり、互いに尊重する気持ちが高まります。それは必ず職場の心理的安全性にプラスに作用します。

もちろん、意見を言う方も、他のみんなの時間を使っていることを意識して、

  • 結論から述べる
  • 事実と意見を切り分ける

などの基本的な発言スタイルは守るべきでしょう。

一人の話が終わるまで、他の人は黙って最後まで聞く。全員の意見を平等に取り扱い、特定の人が話を独り占めしない。こういった当たり前のルールを粘り強く働きかけをしていくしか、風土は変わらないのです。
Photo by Campaign Creators on Unsplash

「中でも重要なのは、どれでしょうか?」

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期の途中で計画に達しないことが分かってきました。例によって挽回のための未達対策会議が開催されます。
そこで挽回のためのあらゆる施策がテーブルの上にあげられ、喧々諤々議論されます。
「新しいプロモーションをやろう」「この商品を重点的に売り込もう」「メーカーと共同で見込み客を回ろう」…

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【書評】戦略質問(金巻龍一著)

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Photo by Christina @ wocintechchat.com on Unsplash
中小企業診断士として経営者とこんな丁々発止の真剣勝負をしてみたいと思える本でした。
著者が工業化と呼ぶ、調査や調整に何ヶ月もかけて大勢で作り上げる経営戦略策定のプロセスではとがった戦略もカドが取れて凡庸になりがち。いっそ戦略の核となる発想の部分だけを経営者とほか数名だけで40分一本勝負で固めていった方がエッジの立った戦略が出来上がるのではないかというアイデア。しかもコアな質問は10個だけ。ワクワクします。

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